主人公は2011年にユネスコ世界遺産に登録された「セリミエモスクと複合施設」。優美で均整のとれた佇まい、計算し尽くされた様式美、内部の繊細な装飾…、天才建築家ミマール・シナンの手による奇跡のようなモスクをじっくりカメラに収めてきました。
このモスクがあるのはギリシャとブルガリアの国境近くの街エディルネ。1363年から100年近く首都として栄え、その後もヨーロッパへの玄関口としての役割を果たしてきましたが、紹介される機会やツアーで訪れることが少なく見逃されがち。ゆえにかえってトルコらしさを残しており、モスクやハマムや木造邸宅、バザールで見かける昔懐かしい駄菓子など、ここでは時間がゆっくり流れているかのようです。
一日で見終わってしまうようなこの小さな街にロケハン＆ロケで2週間半。人々は街を誇りに思う気持ちが旺盛で、どこでも気さくに声をかけられ笑顔で迎えられ、取材にも快く応じてくれました。最終日には行きつけになった食堂で「最後の午餐」。ちょっと大げさなくらいみんなが別れを惜しんでくれました。今回もまた、郷土愛にあふれた人々の善意と優しさに支えられた心に残るロケになりました。
